宿泊したのは約20年以上前の2001年7月。ホテルに夢中になり始めた私の思い出のあるホテルで、まさに私にとって初恋の人。アマンの解説と宿泊記を同時進行で書いていきます。
概要|アマンとは:運命の出会いは CREA Traveler
雑誌「CREA Traveler|完全保存版 アマンリゾーツのすべて」
SNSも携帯もない時代、旅の情報源は、雑誌と、旅行会社のパンフレット、そしてホテルのロビーに置かれてるBrochure(小冊子)だけ。そんなある日。本屋さんのお散歩中、素敵な表紙の雑誌を発見。
表紙はモロッコのアマンジェナ。
2000年10月発売「CREA Traveler」特集「完全保存版|アマンリゾーツのすべて」
表紙を見た瞬間、心臓が高鳴りました。ページをめくるたび、未知の世界への扉が開いていく感覚。
アマンリゾーツって?聞いたことないラグジュアリーな響き。表紙に一目惚れし、夢中で読みふけりました。そこには・・・
・「アマンリゾーツ」:世界に11軒(現在は38軒)世界初の雑誌としての特集
・「アマンマジック」:ゲストを魅了させ来年の宿泊の予約をさせてしまう魔法
・「アマンジャンキー」:世界のアマンを夢中で次々と泊まり歩く人
「こんな世界があるのか!」と感動し、あまりにも気に入りすぎて、雑誌がちぎれたら嫌だなと思い、同じこの雑誌をもう一冊買いました。まるで推しのグッズを買うような気持ち。
アマンジャンキーとは|世界中のアマンに恋して旅する人
ホテルジャーナリスト村瀬千文さんが、とても面白いコラムを書かれていました。
ウソでもいいからだまされたい「女殺しのホテル」村瀬千文
昔深く愛した男のことは、いつまでたっても気になるものだ。「最近ねえ、あんまりよくないんだよ」なんて、風の便りで伝え聞いたりすると、もういてもらってもいられなくなってしまう。その男の名前はアマンリゾーツ。私がかつてただならぬ恋に落ち、深く愛した男・・・。初めての出会いは、バリ島のアマンキラだった(つづく)。
引用:2000年10月25日 文藝春秋発行
「CREA Traveler」完全保存版|至高の楽園アマンリゾーツのすべて
このあと、その「彼=アマンキラ」はさまざまな表情を見せて、「彼女=筆者」を虜(とりこ)にさせていきます。暗闇にたたずむ彼、凛とした彼、明るい陽射しでまぶしく輝く彼。プールサイドで女に囲まれる彼。最後にはスコールに打たれて無防備になった彼。
それほど夢中にさせる「彼=アマンキラ」って、一体どんなに素敵なの!?限られた情報しかなかったから想像力はふくらんだし、冒険心がくすぐられました。分からないからこそ「現地に行かなくちゃ!」と思い、雑誌を見た半年後に絶対行く!と計画しました。
アマン最大の特徴|極上の『アマン=平和』体験を辺境の地で
「アマン」はサンスクリット語で「平和」を意味し、アマンリゾートは全てのゲストに究極の「安らぎ」の提供を目指しています。都会の便利さを求める人とは逆に、都会の喧騒から離れたいと願う人もいます。セレブリティも安心して過ごせる辺境の地にあり、静寂とプライバシーを求める人々が集まってきました。
ゲストのプライベートを尊重し、穏やかに滞在できるようにする。そのため「アマンダリ」はジャングルの渓谷に、「アマンガニ」は大高原に、「アマンジェナ」は砂漠に。「アマンプロ」は小型機でしか行けない南の小さな島に。不便で遠い辺境の地に存在する小規模な高級リゾート、それがアマンの最大の特徴です。
アクセス|成田・関空から直行便で約8時間
チェックイン
バリ島のングラライ空港からバリ島の東部へ車で走ること約1時間半。周囲には観光地もなく静かで、緑豊かな海沿いのロケーションにあります。ホテルは1992年に開業、2023年に改装されています。写真は2001年7月に撮影したものです。
インフィニティプール|絶景!元祖は迫力の3段型!
リゾート建築の巨匠|建築家エド・タートル氏がデザイン
このホテルをデザインしたのはアマンリゾーツ発祥のアマンプリも手がけた、建築家エド・タートル氏。海に面した崖の地形に合わせて設計し、バリの棚田(ライステラス)を表現。美しい3段の水面の最上段から、つぎつぎに下段に水が流れ落ちていきます。
客室|緑豊かな崖にたたずむ 宮殿のようなヴィラ
私が2001年に宿泊したのは「デラックススイート」。アマンは客室が少ないスモールラグジュアリーなホテルで現在の客室数は33室。私が宿泊した時の料金は9万5000円(税サ込)でしたが、現在は約2倍に。趣味で昔と今の公式情報の比較表を作成してみました。
客室カテゴリー表|ガーデン・スイートは約22万/泊
◾️客室カテゴリー表:価格順
客室名 | 客室 | 価格 | ||
---|---|---|---|---|
2001年 | 現在 | 広さ | 2001年 | 現在 |
スーペリア スイート | ー | 94㎡ | $550 | ー |
デラックス スイート | ガーデン スイート | 94㎡ | $650 | $1300 |
デラックス オーシャンスイート | オーシャン スイート | 94㎡ | $700 | $1300 |
プール スイート | プール スイート | 204㎡ | $750 | $1850 |
ー | インフィニティ プールスイート | 200㎡ | ー | $2250 |
ー | キラサリ スイート | 302㎡ | ー | $2350 |
ー | インドラキラ スイート | 250㎡ | ー | $3000 |
アマンキラ スイート | アマンキラ スイート | 660㎡ | $1700 | $5700 |
総数35室 | 総数33室 |
エントランス|隠れ家の玄関からロンボク海峡を独り占め☆
バリ最高峰の活火山、神聖なアグン山の麓に広がる緑豊かな丘陵地帯。その中腹よりやや高い位置にあるデラックススイートに宿泊しました。ここからロンボク海峡の絶景と美しい丘陵地帯を一望できます。
玄関前にはテーブル、チェア、デイベッドがあり、リラックスできる空間が広がります。アマンのルームキーは、各リゾートの象徴となる動物がモチーフ。バリ唯一の海に面したアマンキラでは、お魚デザイン!職人が手彫りした鍵は、とても可愛くて温もりがあります。
リビング&ベッドルーム|天蓋付きベッドで王族の貴婦人に
リビングとベッドルームが一体となったこの空間には、テレビはありません。代わりに、自然の音に耳を傾けてみてはいかがでしょうか、というメッセージ。
はるばると遠く、バリ島のはしっこまで、パパラッチを避けて来たのですから。ご用意された環境に思いっきり浸り、日常を全部忘れました☆
天蓋は、仏像や貴人の寝台、玉座の上に設けられた美しい覆いです。その起源はインドの貴人の日傘に遡ります。天蓋はプライバシーを保ち、権威と豪華さを象徴する役割も果たしていました。憧れの天蓋ベッド。しかもアマンキラの♡ 王族の貴婦人になった気分に。
ウェルカムシャンパンと敷地内に咲く南国の花プルメリアが添えられたウェルカムフルーツは無料で提供されます。食べたい時はスタッフに声をかけると、綺麗にカットして持ってきてくれます。このフルーツは好きなだけ食べられ、毎日追加してくれました。
リビングのデスクとベッドサイドの照明はブラックシェードです。黒いシェードは、夜景を見る際にガラスに光源が映らないようにするためや、電子機器を目立たせないために採用されています。インテリアの一部としてもスタイリッシュな要素を加えています。
建築家エド・タートル氏のデザインの見どころ独自解説!
バスルームエリアには、鏡の前に花瓶が置かれています。この鏡は図解⑧です。2つのエリアをつなぐ短い空間で、光と影、鏡を使い、バリの宮殿を歩いているかのような演出がされています。
バスルーム&洗面エリア
エド・タートル氏は、リゾート建築に蓮池を多用することで知られています。Amanpuri、Amanjiwo、The Sukhothai Bangkokで特に多く見られ、自然との調和や静寂を生み出すために仏教の象徴である蓮、水、池を活用しています。
アマンオリジナルのバスアメニティ。シャンプーボトル、コンディショナーの文字は可愛い手書き。黒い木彫りのキャップは客室のボールペンと同じデザインでした。
白檀の香りで、きめ細かに泡立つ固形せっけん。
レストラン|イタリアン「アルバ」
アマンキラにはレストランが3つ。1つ目はインドネシア料理の「レストラン」。2つ目は、ここ、イタリアン「アルバ」。3つ目は海の前にある「ビーチクラブ」です。アマンキラ内には有機栽培ガーデンがあり、新鮮なハーブ、野菜、果物などの食材を収穫しています。
アマンキラは海辺のリゾートなので、海をモチーフにしたデザインがホテル内の随所に見られます。レストランでは貝殻を利用したテーブルが使われていました。
ビーチクラブプール|原生林の中で静かにくつろぐ時間
ピクニック|ある日は砂浜で。波音を聞きながら
ピクニック|ある日は丘の上で。絶景を眺めながら
バリ製カゴバッグから2名分の朝食をセッティングしてくださいました。フレッシュなオレンジジュースと焼きたてパン、コーヒー&紅茶用には温かいミルクも持参し、丘の上でも何不自由ない完璧な朝食!今も鮮明に思い出します。
インフィニティプール|緑色の宝石に輝くバリの夜
イベント|豪華民族衣装での伝統的バリ舞踊鑑賞
神の怒りに触れてカエルの姿になった王子を、お姫様の愛で王子の姿に戻った、というようなお話。階段に座って見たのですが、衣装が本当に鮮やかで豪華でした。ダンサーの数も多く、ガムラン音楽のライブパフォーマンスはとっても見応えありました。
ライブラリー|建築家タートルマジック満載!
アマンキラのライブラリーには書籍、かいが、バリの骨董品などがあるお洒落なギャラリーになっています。パブリックスペースなので、いつでも自由にのんびりと本を読んだり、他のゲストやスタッフと会話するのも楽しめる場所となっています。
カラーのコーディネートにも統一されています。アマンキラ全体で使用されている木は濃い飴色で。そしてインテリアに緑色の差し色を使い、自然ともとても調和されていると思います。
宮殿の門を形どった鏡がはめ込まれています。意識せずとも、この形状をアマンキラ中で見ているはず。宿泊客は潜在的に水の宮殿「タマン・ウジュン」が擦り込まれている。初めて訪れても 「あ・私ここに昔きたことがあるような気がする・・・」って言ってしまいそう。
チェックアウト
お見送り時にも次の予約をしてしまうアマンマジックにかかる
感想|築30年経っても解けないアマンの魔法
宿泊当時、20代後半でアマンに泊まるのは金額も年休も厳しかったけれど、「絶対行く!」と心に決めて飛び込んでのぞいた世界は素晴らしく、今も忘れられません。この経験があるから、「体験」にかける価値を深く考えるようになりました。
アマン創業者のエイドリアン・ゼッカ(Adrian Zecha)氏とエド・タートル(Ed Tuttle)氏が若かりし頃に手がけた伝説のホテル。女殺しの凛々しかった彼(=アマンキラ)が、30年経った今はイケおじとなって年を重ねていることが本当に嬉しいです。書きながら、また泊まりに行きたくなってきました☆